今回紹介する1冊はこちら。
その「一言」が子どもの脳をダメにする
【著 者】・・・成田奈緒子・上岡勇二
【発行日】・・・2023年10月15日
【頁 数】・・・237ページ
こんな人にオススメします!
- 幼児期~中学生くらいまでの子どもがいる方
- 子どもと接する機会が多い方
- 子どもとのコミュニケーションが上手くいかない方
- 子どもに対する自分の言動に不安がある方
- 子どもの健全な成長を願っている方
著者はどんな人?
成田奈緒子・・・
小児科医・医学博士・公認心理士。1987年神戸大学医学部卒業後、米国セントルイス・ワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。
上岡勇二・・・
臨床心理士・公認心理士。1999年筑波大学大学院教育学研究科を修了したのち、適応指導教室、児童相談所、病弱特別支援学校院内学級、茨城県発達障害者支援センターで、家族支援に携わる。
子育て支援事業「子育て化学アクシス」・・・
本書の著者二人が中心となって2014年立ち上げ。医療、心理、教育、福祉の専門家が集まり、「ペアレンティング・トレーニング」の理論を基にした親支援、家族支援を行っている。
本書の特徴
子どもに対してどのような言葉をかければいいのか。
どのように子どもの声を聴けばいいのか。
本書は、親が発する「言葉」が子どもの脳の発達にどのような影響を与えるかがメインテーマです。
脳科学や心理学などを取り入れた考え方を基準とし、子どもの脳が大人の脳へ成長するまでには順序があり、それに合わせた環境や生活が必要とのこと。
本書タイトルにもあるように、「脳に悪影響を与えず、より良く育てるためのコミュニケーション」が書かれた本です。
筆者あまざけが特に印象に残った部分を含め、本書の言いたいことは大きく3つに分類されます。
本書が伝えたいこと
- 親は子どもの家庭生活で必要な「軸」を持つ
- 「あいまい言葉」を避ける
- 子どもを信じる
なお、本書は言葉やコミュニケーションに特化しているので、子どもへのお金の使い方や社会との付き合い方などは書かれていません。
親は子どもの家庭生活で必要な「軸」を持つ
あなた自身が学校に通っていた時のことを思い出してみてください。
テストの点数で決まる「成績という評価」をされ、「学校という社会」の中で友達や先生と常にコミュニケーションを取り続けていたと思います。
本書に以下のような記述があります。
親は学校や塾での成績を測るモノサシを持つべきではありません。
親が口に出さなくても、子どもは学校で成績という評価にすでに十分にさらされています。
著者は『親が問題にすべきことは「家庭の中で子どもがどのように生活しているか」だけです。』と記しています。
本書は「家庭でありがちなシーン」を例題としてあげ、「良い受け答え」と「悪い受け答え」の両方を解説しています。
本書では、家庭の役割として以下のように書かれています。
「あいまい言葉」を避ける
「ちゃんと片付けなさい」という、よくあるフレーズ。
この「ちゃんと」というあいまいな言葉は親と子で認識が異なる場合が多分にあります。
本人は片付けたつもりでも、親からしたら場所を動かしただけで片付けとは言わない、といった具合に。
「ちゃんと」「きちんと」「しっかり」などは、その時の状況によって定義の変わる「あいまい言葉」です。この言葉を使うことによって子どもの脳は不安になり、混乱し、脳の成長が阻害されてしまいます。
『親が子どもに何かを伝えるときは「ロジカルに」「フルセンテンスで」が基本』とのこと。
言葉が足りなくても、大人は知識と経験、その場の状況に応じて補完することが出来ますが、成長段階の子どもはそうはいきません。
しかし、「ロジカルに」と書かれていますが、正論ばかりなのもNGとのこと。
著者は『子どもが混乱して不安を感じているときは正論を言うのではなく、脳育てのチャンスと考えましょう。』と、アドバイスが書かれています。
子どもを「信じる」
「認める」ということは、言い方を変えると子どもを「信じる」ということです。
子育てとは「心配100%/信頼0%」の子どもを、日々の家庭生活の中でコミュニケーションを取りながら成長させ、「心配0%/信頼100%」の状態にして社会に送り出すこと。
心配だからと言って、親が先回りして道の整備と安全を保っていては子どもは成長しないでしょう。
大怪我や他人に迷惑がかかることは予防しなければなりませんが、失敗は「脳育て」における最大のチャンス。
子どもの不安を感じ取る
本当に子どもの成長を考えているなら、「あなたのことを思って」という言葉は口にすべきではありません。
この言葉は、親が子どもを支配するための呪文です。
子どもが嘘をつく理由は、多くの場合、本人ではなく親にあります。子どもは親に「怒られる」「悲しまれる」「否定される」などと思うから嘘をつくのです。
嘘の根底にあるのは子どもの不安なのです。
親が子どもの一挙手一投足にまで口を出すのは、子どものことを案じるが故でしょう。
しかし、それでは「親の指示がないと行動できない」「ものごとの判断基準が、親に認められるかどうか」という思考になってしまうかもしれません。
読んで感じたこと
「日常生活の中でも、子どもを成長させることが出来るイベントはこんなにもあるんだ」と気付かされた一冊です。
親としての立ち回り方ひとつで子どもに良い刺激を与え成長させることが出来るのだな、と改めて感じました。
子どもが自分の頭で考え判断し、最適な行動を選択できるように育てる・・・。
そうは言っても、失敗して体や心が傷付かないか、人間関係で嫌な思いをしないだろうか、他人に迷惑をかけないだろうか・・・。
子どもの身を案じてしまうのは親として当然の感情だと思います。
子どもなので、状況判断や先の見通し等は大人に比べれば当然、劣ります。ですが、大人の僕たちだって様々な経験を繰り返してきて今に至っている訳です。
子どもを信頼して社会に送り出せるよう、親自身も考え、努力していく必要があります。
本書を読んで印象に残った記述はたくさんありますが、特に気付きが多かった部分は以下。
親は子どもに対して、自分とは別の一人の人間であると自覚すべきでしょう。
親は自分の意見を押し付けるのではなく、子どもの考えを引き出すような言葉がけを心がけましょう。
本書のポイント
最後に本書のポイントをまとめておきます。
- 親が発する「言葉」が子どもの脳の発達に影響を与える
- 子どもの脳の成長順序に合わせた環境や生活が必要
- 親は子どもの家庭生活で必要な「軸」を持つ
- 「あいまい言葉」を避ける
- 「失敗をした後」にフォローするのが親の役目
- 子どもを信じる
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