今回紹介する1冊はこちら。
『コンサルタントの父が大学生の娘に教えるシンプルな会計』
【著 者】・・・大石哲之氏
【発行日】・・・2008年7月1日
【頁 数】・・・222ページ
Contents
こんな人にオススメします!
- 論理思考の基礎を学びたい方
- 自分の考えを上手く発信できない方
- 商談やプレゼンの機会が多い方
- 理路整然とした資料を作りたい方
著者はどんな人?
著者の大石哲之氏は1975年生まれ。
慶應義塾大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、ネットベンチャーの創業などを経て、株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、株式会社タグボード監査役、一般社団法人日本デジタルマネー協会理事などを歴任。
現在は、ビジネスコンサルタントとして複数の会社の支援や創業に関わる一方、作家としてコンサルタントのスキル、プロフェッショナルのキャリア構築などの分野で多数の著作があります。
あまざけの所感
本書は、啓発本でも著者の経験を綴った本でもありません。
これは論理思考の技術書です。
「伝える」機会が多い人にとって、本書は必須ともいえる内容
「こういうふうにすれば自分の考えがまとまるのか!」
「こういうふうに話を組み立てれば相手に伝えることができる!」
読み終えたときには、僕はこのように感じることができました。
本書の内容を意識すれば、普段の会話や商談、プレゼンなどのクオリティがグッと上がるはずです。
営業マンや企画担当者など、「伝える」機会が多い人にとって、本書は必須ともいえる内容となっております。
本書には説得力を高める手法が満載
著者はプロのコンサルタントなので、本書の内容は説得力があり、とても理解しやすいように組み立てられています。
ビジネスコンサルタントとしてのプレゼンの作り方も詳しく解説されていますので、これを真似するだけでも効果が出そうです。
僕あまざけが個人的に図星を突かれたのは、『裏付けがなく理由だけを長く説明すると、単なる「思い込み」や「屁理屈」と捉えられてしまうことがある』ということ。
(本書の内容として後ほど紹介させていただきます)
僕自身、仕事・プライベート問わず「相手に上手く伝えることができなかった」と失敗を顧みることがあるですが、この「裏付け」の部分が弱かったという場合が多いです。
「その仕事の目的は何か」ということを基準に考える
本書で解説されている『ゼロベース思考』(これも後ほど紹介します)については、自分の仕事でもかなり必要となった考え方でした。
同じ方法で仕事をしていると、その方法が「最も正しい方法」だと錯覚してしまい、効率化を図ろうとしても今までの方法の延長線上で考えてしまいがちです。
このゼロベース思考は、僕も実際の仕事で役に立った考え方です。
コロナによりテレワークが推奨され、事務所でやっていた仕事を場所・人を問わず出来るようにしなければならなかった時です。
「紙で出していたのをPDFにする」、「電話や文書で連絡していたのをメールにする」ということではオンライン化の意味を為しません。
これでは「媒体が変わっただけで方法は同じ」です。これでは効率化にならないので、ゼロベース思考で考え直す必要がありました。
グループウェアを使って報告や申請を行ったり、場所と作業者が変わっても進捗を共有できる仕組み作りなど、方法自体を変えた仕事もありました。
慣習や前提を一度取っ払い、「その仕事の目的は何か」ということを基準に考えると思いがけない成果を上げることができます。
玄人にもオススメ
本書はどちらかというと、僕のような初心者向けの本です。
「このことはすでに取り入れている」と感じる方もいらっしゃると思います。しかし、ご自身の復習のため、周りの方へのレクチャーのために本書で勉強し直すということにもオススメの本です。
本の内容
それでは、本書の要点を紹介していきます!
コミュニケーションが噛み合わないのには理由がある
自分の周りのごく狭い「常識」だけを一般論として、相手に論理を展開してしまう。または、自分たちの会社や業界でしか共有されていない特殊な一般論を、相手に理解してもらわないまま、論理展開のなかで使ってしまう。
これがお互いのコミュニケーションが噛み合わない理由の多くを占めています。
言葉選びにしてもそうですよね。
業界用語や横文字など、相手が分からない言葉を使うと伝わりません。
ピラミッド・ストラクチャーは論理思考における究極のツール
ピラミッド・ストラクチャーは、「これがいつでも確実にできるようになれば、論理思考はすべて学んだ」と言えるくらいの究極のツールです。
ピラミッド・ストラクチャーとは、「結論」と「その理由」をピラミッド状に広げて説得力の高い主張をするための手法です。
本書では具体的な使用例とともに、利点を3つ挙げています。
- 結論から述べることができる
- 後から理由づけを追加できる
- 事例やデータを関連づけることが容易
結論を述べ、その理由を挙げ、根拠や補強となるデータを添えることで説得力を高めます。
しかし、その「データ」の取り扱いにも注意すべきと書かれています。
なるべく客観的で中立的なファクトを使うことが必要となるため、数字で表現できるデータを使う、一次情報に当たることがポイント。
典型的な二次情報は、新聞や雑誌の記事です。記者が取材したものを、記者に都合がよい視点で編集してある場合もあります。
その投稿のツリーを見ると賛同されていることが多いので「正しい情報」と誤認してしまう可能性もあります。
仮説思考で最初に犯人を決める
結論を出すにあたって、完璧を求めすぎるがゆえにデータ集めに時間がかかった。あなたはこのような経験をしたことがありませんか?(僕あまざけはあります・・・)
データを網羅的に集めて、詳細に検討して総合的に結論を出す。一見、正しいやり方に思えますが、実はこれ、コンサルタントの世界では御法度とされているそうです。
重要なのは、最初に立てた仮説の精度ではなく「仮説→検証→修正」のサイクルをいかに早く回すことができるかという点です。
コンサルタント会社では仮説が間違っていても誰も責められませんし、むしろ「あの説はないということがわかり、真実に近づいた」と喜びます。
「思い込み」と思われないために
説得力に欠けるプレゼンは、ファクトの部分がまったく欠けているものが多いのです。裏付けがなく理由だけを長く説明すると、単なる「思い込み」や「屁理屈」と捉えられてしまうことがあります。
理由と裏付けをセットにして提示することで、客観的な事実に基づいていることを伝えるのが大切です。
本書では「CRFの法則」というものが解説されています。以下の3つがセットになっていると説得力、分かりやすさが増すというものです。
- 結論-conclusion
- 理由-reason
- 裏づけ-fact
事実と事実をぶつける議論が論理的な議論です。この逆が、思い込みと思い込みをぶつける議論です。意見と事実は区別して伝える、区別して議論するということが重要です。
物事の本質を、論理思考で捉えなおす
本書では、「起承転結をビジネス文書に取り入れてはいけない」と注意しています。
起承転結というのは「話の盛り上げ方」であって、論理的に話すための文章構成法ではないのです。
国語の時間の文章表現は、ビジネスのためのロジカルな文章ではなく、エッセイや小説のような感情を表現し読み物として面白いものを書くための表現方法を習っているのです。エッセイや小説の構成と、ビジネス文書の構成は目的からして違います。
ビジネス文章では一行目に犯人を書いてほしいのです。
「ビジネス文書の目的」を意識していれば、結論を最後に持ってくるような構成にはならないはずです。
「目的を意識する」ということについて、本書ではゼロベース思考という考え方が解説されています。
ゼロベース思考とは、今までの延長線上で考えるのではなく、「そもそもどうあるべきか」という本質を考える思考です。
業務改革などの場合、今までこういうやり方をしていたから、という前提を置いてそれを改善しようと考えがちです。改革や新しいものというのは、従来の延長線上や改善だけてば生まれてきません。
物事の本質を、論理思考で捉えなおし、過去のしがらみや既成概念にとらわれず、あるべき姿を考えることが必要です。
過去の経緯や前提事項をいったん白紙に戻してもう一度考える、というのがゼロベース思考です。
大きな問題は原因を細分化して解決する
「イシュー・ツリー」とは、考えられる原因を論理的にモレなく把握するためにツリー状にしてわかりやすく示したものです。
問題の根本原因を探るため、イシュー・ツリーを使い、大きな問題と小さな問題にブレイクダウンします。
そのためには「なぜ?」を考えます。「なぜ?」を繰り返し、問題の要因を構造化し、原因がどこにあるのかを実際に調査・分析して突き止めます。
答えの分からない未知の数字を推計する「フェルミ推定」
答えのわからない未知の数字に対して、論理思考力を使って値を推計することを「フェルミ推定」と呼びます。
例えば、「シカゴにピアノの調律師は何人いるか?」という問題では、
シカゴのおおよその人口
↓
世帯数
↓
ピアノの保有率
↓
調律頻度
と分解し妥当な仮定をおきながら、最終的な「調律師の人数」を推定します。
フェルミ推定の話をすると、「世の中の統計なんかグーグルで検索すればわかるのに、どうしてそんなややこしい推定をするのか?」という反論をされることがあります。
しかし、世の中にはグーグルでは出てこない数字もあるのです。例えば、新規事業のプランをたてるとき、新しい製品やサービスをどれくらいの人が買ってくれるかわかりません。
市場予測、売上予測はグーグルで調べても出てきませんので、何らかの仮定をおいて、フェルミ推定を使って考えることが求められます。
本書のポイント
最後に本書のポイントをまとめておきます。
この本のポイント
- 「ピラミッド・ストラクチャー」で説得力を高める
- 「仮説→検証→修正」のサイクルをいかに早く回せるか
- 事実と事実をぶつける議論が論理的な議論
- 過去の経緯や前提事項をいったん白紙に戻してもう一度考える「ゼロベース思考」
- イシュー・ツリーを使い、大きな問題と小さな問題にブレイクダウン
- 「フェルミ推定」で答えのわからない未知の数字を推計する
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