今回紹介する1冊はこちら。
『自分でできる子に育つほめ方、叱り方』
【発行日】・・・2020年4月20日
【頁 数】・・・193ページ
Contents
こんな人にオススメします!
- 3歳~12歳の子どもがいる方
- 子育ての方法に不安のある方
- 褒め方と叱り方が分からない方
- 子育てに関する情報を集めている方
著者はどんな人?
著者の島村華子氏は、モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者。
- 上智大学卒業
- カナダのバンクーバーに渡りモンテッソーリ国際協会の教員資格免許を取得
- カナダのモンテッソーリ幼稚園で教員として活動
- オックスフォード大学にて児童発達学の修士、博士課程修了
現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わっているとのこと。
あまざけの所感
まずはじめに。
育児の質を高めようと本書のような「子育て本」を読もうとしているあなたは、多少なりとも心に余裕があるのではないでしょうか。
日々の忙しさに追われて心身ともに余裕がまったく無かったら本なんて読まない(読めない)でしょう。
余裕があるからこそ、「自分の育て方は子どもにとって良いものなのだろうか」と立ち止まって客観的に考えることができます。
本書には以下のような記述があります。
実際に仕事と子育ての両立で焦ったり罪悪感を感じたり、あるいはストレスを感じている母親と一緒に時間を過ごすほうが、子どもの心にネガティブな影響があることが分かっています。
つまり、母親自身の心の満足度が高い状態であることが非常に大切だということです。
なぜ「母親」と性別を指定されているのかということに関しては深く追及しません(本書と趣旨が異なるので)。
ただ、子どもの心は、母親に限らず育児に携わる大人の精神状態に大きく影響されるということに関しては激しく同意しています。
僕は小学生と園児の2人の子を持つ親ですが、仕事で疲れてイライラしているときは子どもに対して感情的に接してしまったことがあり、その時の悲しそうな顔を思い出すと今でも心が苦しくなります・・・。
なので、子育てスキルを磨く前に、親自身の精神状態を良好にすることを第一に考えるべきだと僕は考えています。
本書にある「大人にとって都合の良い子ども≠賢い」という部分では耳が痛かったですが、読み進めると、それが子どもにどのような影響を与えるのかが記述されており、自分の反省に繋がりました。
「親が子どもに対してしてあげられること」といえば、質の高い”教育”や自然や文化などの”体験”などが上位として思い付きますが、そのようなことは書かれていません。
本書には「子どもに心から寄り添い、話を聞き、認めてあげるということが大切」と書かれています。
親にとっては何気ない日常の受け答えのひとつであっても、実はそれが子どもにとっては悪い影響・良い影響を与えることになる。
そのようなことに気付かせてくれる本となっております。
本の内容
それでは、本書の要点を紹介していきます。
子どもへ接するときは条件を付けない
”普段の自分の行動が、子育ての長期的なゴールにいかに貢献しているか、あるいは子どもの成長の邪魔になっているのか、意識して考えてみましょう。”
本書にはこのような記述があります。
子育てをしていると、どうしても目先のことに注意が行きがちですよね。
子どもに静かにしていてほしいから「静かにしてくれたらお菓子を買ってあげる」と買収した経験がある方もいるかと思います。
しかし、「子どもの行動を大人がコントロールしようとする」ことは子どものためにならないと本書には書かれています。
無条件の接し方では、親の愛情というのは「見返りを期待しない贈り物」です。一方で条件付きの接し方では、親の愛情は「子どもがよいことをして稼がなくてはいけないもの」です。
愛情をエサにする接し方を繰り返すと、ほめられたときに愛されていると感じ、逆にそうでないときには愛されていないと感じてしまうのです。
条件付きの接し方のデメリット
子どもの行動の良し悪しによって褒美や罰を与えていると、子どもの言動に大きな影響を与えます。
本書には以下のように書かれています。
ほめられ続けると、次はどうやったらほめられるかということに意識が向くようになり、この結果、自分の行動(例:友だちに優しくする)が相手に与える影響(例:友だちが笑顔になる)を考えずに、自分のことだけを考えるようになります。
また罰も同じで、自分に罰を与える相手が悪いと思うようにある、あるいはいかに罰を逃れるかということに意識が向きます。このため、自分の損得だけを考える自己中心的な人になってしまうのです。
大人の勝手な期待を子どもに押し付けない
「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい!」、「さすがお兄ちゃんだね!」。
あなたはこのような事を子どもに言ったことはありますでしょうか?
「お兄ちゃん」だからというのは「~すべき」という大人の勝手な期待の押し付けです。
お兄ちゃんらしく、お姉ちゃんらしくふるまわなかったら愛情がもらえないと考える可能性もあります。
無意識のうちに「大人にとって都合の良い期待」を子どもにかけていることは多いのではないのかと感じます。
泣くのは、子どもの仕事です。いろいろな感情を経験するのが、子どもの仕事です。自分の興味を探求するのが、子どもの仕事です。欲求を自身の言動で伝えるのも、子どもの仕事です。
実際には本来の成長段階にあった行動をとっているだけなのに、多くの人々が無意識に求めているのは、大人に「迷惑」をかけない子どもでいることなのです。子どもの行動の善しあしは、大人の都合で決めるべきものでしょうか。
「迷惑をかけない=賢い」というわけではありません。
「あなたが大人になったときには、自分をしっかりもって、自立していて、さらに強い意思をもった大人になってほしいけれど、子どものうちは受け身で、従順で大人の言うことを聞く子でいてね」。
どう考えても矛盾していますよね。
大人にとっての都合しか考えていないということですよね。
罰の連鎖は世代を超える
「この親にしてこの子あり」という言葉があります。
「子は親の性質を受け継ぐ」という意味で、現代では良い意味でも悪い意味でも使われています。
罰を使った子育ては、暴力や圧力で問題が解決できるというメッセージを子どもたちに送っているのです。
双方の意見や想いを尊重した話し合いなしに、一方的に力を行使する方法が「模範」であった子どもは、大人になったときに平和的解決を率先して取り入れるでしょうか?このような子育てを経験した子どもは、自身が親になったときも同様に権力を行使する専制的な接し方をすることが多く、罰の連鎖は世代を超えることもわかっています。
専制的な親を反面教師としている方も、中にはいるでしょう。
しかし「自分の経験と親に教わったこと」はその後の考え方や思想に大きな影響を与えることは容易に想像できます。
能力や見た目に集中した褒め方・叱り方はNG
褒め方・叱り方って難しいですよね。
つい感情的になって怒ってしまったり、忙しくておざなりな褒め方になってしまうシーンも多いかと思います。
本書にはこの件についても言及されています。
ほめるときと叱るときはどちらも、能力や見た目に集中した声かけを避け、努力や経過に言及したり、子どもの行動について具体的に声をかけたりすることが重要です。
では、どう接したら良いのでしょうか。
罰を与える(叩くなど)、あるいは一方的な叱り方をした場合、子どもの意識はいかに罰を逃れるかということに向くため、自分の誤った行動を振り返る機会がありません。
一方で具体的な理由で説明された場合、自分の行動と結果の因果関係(例:友達を叩いたら、友達が泣いた)を始めて理解するようになるほか、他者への影響を指摘することで(例:叩かれた友達は悲しかった)相手を思いやる気持ちが生まれるのです。
これについては大人も同じで、頭ごなしに怒鳴られるより、具体的に「何がいけないのか」を冷静に指摘されたほうが次への行動に繋がりますよね。
「子どもをひとりの人間として尊重し対等に接する」ことが重要だと分かる文章です。
大人の価値観や判断というフィルターを通さずに寄り添う「アクティブ・リスニング」
「アクティブ・リスニング」という言葉が出てきます。
これは、大人の価値観や判断というフィルターを通さずに、子どもの世界に寄り添い、心から子どもの話に耳を傾けることです。
こうすることで、最終的に子どもが自分の力で考え、解決できるようになるとのこと。
本書ではアクティブ・リスニングの長所についてこのように書かれています。
「自分の話を批判されず、理解してもらえている」という安心感をもたせられるため、言い訳をしたり、駆け引きをしたりすることなく、子どもが自分自身を振り返り、自ら解決策を考える機会を持てることです。
仕事、家事、人付き合い。何かと忙しい現代人ですが、全身全霊で子どもに寄り添うことができれば、子どもとの信頼関係の構築や将来への成長に繋がることが本書では語られています。
本書のポイント
最後に本書のポイントをまとめておきます。
- 子どもへ接するときは条件を付けない
- 大人の勝手な期待を子どもに押し付けない
- 「迷惑をかけない=賢い」というわけではない
- 罰を使った子育ては、暴力や圧力で問題が解決できるというメッセージを送っている
- 親自身が幸せであることが大切
- 子どもをひとりの人間として尊重し対等に接することが重要
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