今回紹介する1冊はこちら。
『敗者のゲーム [原著第8版]』
【著 者】・・・チャールズ・エリス
【発行日】・・・2022年1月5日
【頁 数】・・・293ページ
Contents
こんな人にオススメします!
- 投資の勉強を始めた方
- どのような商品、どのような運用方法を取ればよいのか悩んでいる方
- 新NISAで投資をする方
- インデックスファンドが気になっている方
- 有名な投資書籍を読みたい方
著者はどんな人?
著者の「チャールズ・エリス」は1937年生まれ。
米国公認証券アナリスト協会会長、バンガード取締役などを歴任するほか、ハーバード・ビジネス・スクール、イェール大学大学院にて上級運用理論を教える。
書評にあたって
本というのは、著者からしたらいわば虎の巻。
核心に触れることを易々と引用してはいけないと僕は考えます。
このブログを読んでいただいているあなたに概要や見どころを紹介し、「本を買って詳しく読みたい!」と思ってもらえるような記事作りを目指しています。
本書の特徴
本書は投資哲学の名著。投資を始めるなら必ず読むべき一冊です。
数ある投資の中でも「インデックスファンドで長期運用すること」をテーマとした本です。
株式の個別銘柄、債券、不動産、金・・・。さまざまな投資がある中、なぜインデックスファンドなのか。
インデックスファンドの利点を詳細に、それでいて分かり易く書かれた本です。
「勝者のゲーム」と「敗者のゲーム」
本書タイトルにもなっている「敗者のゲーム」とはどのようなゲームなのか。
著者は、TRW社の著名な科学者サイモン・ラモが「テニス」に例えた話を引用している。
プロのテニスはミスが少なく勝つためのプレーで結果が決まる「勝者のゲーム」であるのに対し、アマチュアのテニスの勝敗の分かれ目は正確なショットなどではなくミスによって決まる「敗者のゲーム」なのである。
現在の市場には、最新で質の高い情報を誰よりも早く得ることができ優秀な人材が集まっている機関投資家が取引所の取引の99%を占めています。
現代の株式市場は、ミラクルショットを放ってテニスの試合に勝つ「勝者のゲーム」ではなく、常にミラクルショットを放つ中でいかにミスを減らすかという「敗者のゲーム」に成り代わったと言われます。
機関投資家が「市場そのもの」だから、機関投資家が市場に勝つことは不可能に近い。
アクティブ・マネージャーが市場平均に勝つには、コスト以上の実績をあげなければならない。
例えば、株式投資の市場収益率の平均が7%とすると、アクティブ運用機関が市場平均と同じ成績を上げるための収益率は「7%+コスト」が必要。これだけの成績を上げることは、能力があって桁違いの情報を持つプロの投資家が独占している今の市場では不可能に近い。
ほとんどのアクティブ・マネージャーと顧客が勝てない理由はここにある。
しかし僕たち個人投資家において、機関投資家のような設備や経験、頭脳を持ち合わせているひとはごくわずか。
「ミスター・マーケット」と「ミスター・バリュー」
著者は「ミスター・マーケット」と「ミスター・バリュー」というふたりの人物に株式市場を例えています。
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いつも投資家を翻弄する。
予想外の収益や配当、突然のインフレや政策変更、物価指数の変動、倒産、新技術の出現、時には戦争の可能性などをちらつかせ、投資家の気を引こうとする。
無責任なミスター・マーケットは世の中の情勢にはお構いなしで、踊りに夢中になっている。
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彼の暮らす世界には、感情や幻想の介入する余地はない。彼は夜も寝ずに材やサービスを生産し、分配し続ける。黙々と仕事を続け、毎日地に足の着いた仕事をする。楽しくはないが経済そのものを動かしている。
短期的にはさまざまなトピックスが起き、10年に1度程度にはリーマンショックやコロナショックなどのショックウェーブも発生します。
一時的なトピックスに振り回されて売買を繰り返したり考え方を買えたりしてはいけない。歴史から学ぼう。と著者は言います。
長期投資で成功するには、ミスター・マーケットに振り回されずに、しっかりと自分の投資方針を堅持しなければならない(親が反抗期の子供に振り回されてはならないのと同じだ)。
未来のことはプロの投資家でさえ分かりません。
なので、「現時点の情報の中で、自分の目的を達成するためのプラン」に正当性があることが大前提です。
なぜインデックスファンドなのか
著者のチャールズ・エリス氏は以下のように言い切っています。
投資で長期的に成功したいなら、答えはシンプルだ。実行が簡単なインデックスファンドを買うこと。
投資のプロが席巻している今日の市場は、まさしくプロの動きの総和を示す。
つまり、株式市場を反映しているインデックスファンドへの投資はただちに専門家のコンセンサスを得られるということだ。
著者はインデックスファンドの利点を以下のようにまとめています。
- 相対的に高いリターン
- 低コスト
- 税金が安い
- 売買コストが低い
- 判断ミスによる投資の失敗をしないですむ
- 運用目的、長期投資方針といった最重要課題だけに専念できる
- 不安や後悔を感じなくて済む
こういった利点から、「インデックスに沿った投資をすることでほとんどの運用期間を上回る成果をあげられるだろう」とのこと。
第2部:論理的解説 第3部:アドバイス
僕がここまで紹介してきた内容はすべて「資産運用でまず押さえるべきこと」という第1部のものです。
この内容を前提に、第2部では論理的に解説されます。
そして第3部では読者に向けた投資アドバイスとなります。
アドバイスと言っても、「この銘柄を買うべき」などの直接的な投資指南ではなく、「投資リテラシーを高めるために」といった内容が主になります。
あまざけの考え
NISAで運用をするなら読むべき一冊
新NISAの開始目前ということもあり、インデックスファンドに注目が集まっています。
新NISAで投資を始めるという方も多いでしょう。
ならば、まずは「情報収集」です。
情報と言っても「今はどの銘柄が伸びているのか」や「今後の市場の動向は?」などといったものではなく、
- なぜ投資をするのか考えよう
- 合理的な判断をするためには
といった「自分で考えることへのヒント」を集めることが重要です。
むしろ、本書では「株価の騰落や市場の動向などを気にするな」といった旨が書かれています。
プロの投資家たちですら「敗者のゲーム」の中で戦っている株式市場にアマチュアが参入するなんてもってのほか、というわけですね。
「自分を知ること」の重要性が分かる
投資で一番危険なことは、目の前の状況にとらわれ過ぎて短絡的視野に立ってしまうことだ。
投資はまず「自分を知ること」から始まるというのはこのためである。
投資をする理由や目的は人それぞれ。年齢、家族構成、家計の状況、目的などさまざま。
つまり「自分に合った投資方法は自分で考えるしかない」のです。
本書はそういったことを考えるきっかけになり、アドバイスを貰える本です。
自分のことを知っていると、同じ情報でも捉え方が変わります。
自分に合った情報に絞って集めることができたり、自分とは異なる考え方を見つけた場合は自分の意見をより強固にできたり修正したりすることができるかもしれません。
そうやって自分の考えをアップデートしていき、「目的に合った自分だけの投資スタイル」が完成するのではないかと考えています。
「敗者のゲーム」という本書はとても有名で名著と扱われていますが、これも「考え方のひとつ」です。
この考え方がマッチする人もいれば、そうじゃない人もいるでしょう。
客観的に情報を捉え、自分の考え方のバグやエラーを取り除いていくことができる「訓練」にもなりうる本、それが本書だと感じました。
本書のポイント
最後に本書のポイントをまとめておきます。
- 本書は投資哲学の名著。投資を始めるなら必ず読むべき一冊
- 株式市場の99%は機関投資家の売買で構成されている
- 投資はいかにミスを減らすかという「敗者のゲーム」
- 長期投資で成功するにはしっかりと自分の投資方針を堅持しなければならない
- 投資はまず「自分を知ること」から始まる
関連書籍
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