今回紹介する1冊はこちら。
『敗者のゲーム [原著第8版]』
【著 者】・・・安藤広大
【発行日】・・・2020年11月24日 第1版発行
【頁 数】・・・287ページ
Contents
こんな人にオススメします!
- 部下を持っている人、これから部下を持つ人
- プレイングマネージャーとして仕事をしている人
- 部下との接し方、指示の仕方に悩みがある人
- 「上司が冷たい、厳しい」と感じている方
著者はどんな人?
著者の「安藤広大」氏。
- 1979年、大阪府の生まれ。
- 早稲田大学卒
- 株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス(現:ライク)のジェイコムで取締役営業副本部長等を歴任。
- 2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。
- 2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、識学を設立。
- 2019年、創業からわずか3年11カ月でマザーズ上場を果たす。
- 2022年3月現在で、約2700社以上の導入実績。
書評にあたって
本というのは、著者からしたらいわば虎の巻。
核心に触れることを易々と引用してはいけないと僕は考えます。
このブログを読んでいただいているあなたに概要や見どころを紹介し、「本を買って詳しく読みたい!」と思ってもらえるような記事作りを目指しています。
本書の特徴
本書は「組織の目的を達成するため、最も合理的なリーダーの役割」を説いた本です。
上司としてのあるべき姿、部下との接し方、仕事への向き合い方など、著者の体験を踏まえた考え方が書かれています。
ルールがあるからこそストレスが無くなる
ルールや規則と聞くと「息苦しい」「個性が無くなる」といった声も上がります。
しかし著者は「ルールがあるからこそ能力を発揮でき、成長できる」と述べています。
秩序を保ち、公平な判断とコミュニケーションをすることでチームのストレスを軽減させるとのこと。
・「自由にしていい」はストレスになる。
・ルールのある組織に「気遣いでやる仕事」という概念はありません。
・チームが成長するかどうか。それはリーダーが感情的に寄り添うことをやめられるかどうかが鍵を握っているのです。
ピラミッド組織の利点
ピラミッド組織と聞くと「決裁までに時間がかかる」、「昔ながらの上下関係」というイメージがあるかと思います。
しかし著者は、「ピラミッド組織は成長スピードが速い。それは決定する人が明確で、責任の所在がハッキリしているからです。」と述べています。
例えば「目標数値を達成することに貪欲で厳しい上司」と「ミスを許容してくれて優しい物言いの上司」がいるとしましょう。
どちらの上司が良い悪いという話ではなく、「自分が成長できるか」という点に注目すると前者の方が理想ではありますよね。
筋トレは自分が負荷を感じるからこそ筋肉が成長するように、自分のレベルのひとつ上の難易度をこなすことが成長に繋がります。
部下が成長するということはチームが成長することでもありますので、前者の上司は「組織運営上の立ち位置を理解している」と捉えることが出来ます。
高い位置にいる人は、未来を見据えて決断し、行動する責任を背負います。
優しい上司は今の部下にとっては良い上司ですが、「未来」に視点を移すと部下は成長できないためマイナスの存在となります。
しかしその「厳しさ」が感情的なものであってはただのパワハラです。
そうさせないための「ルール」が必要ということ。このルールは部下に守らせるルールだけではなく、上司にとっても順守すべきルールです。
感情をわきに置いて「ルール」で管理し、「位置」によるコミュニケーションをするとパワハラは発生しない。
ルールの設定と運営だけでは、感情が入り込む余地がありません。
集団でものごとを成した方が得られる成果が大きい
第3章は「利益」について書かれているのですが、ここも共感できる部分が多くありました。
「ひとりだと小動物しか狩れないが、大勢だとマンモスを狩ることができ、利益が大きくなる」という、誰しもが分かっているけど忘れがちなことも書かれています。
大きな利益を得る為に、組織のルールを決め、各リーダーが立ち位置を理解して職務にあたる・・・。今までの話が繋がっていますね。
「組織のために個人を無くせ」とは言っていません。「組織のために働いたことが、個人の利益に繋がっていく」だけです。
私は「会社にうまく使われる」ことを意識した方が成長は早いと考えます。どこまで行っても、「組織合っての個人」だという考え方です。
会社で評価されない人が、社会から評価されることなんて滅多にありません。
「自己評価」と「他者評価」についての言及もあります。
最初に他者評価を獲得できないと、自己評価には何の意味も生じないのです。
レストランに例えると、自分が美味しいと思う料理でも、それを他人に評価されなければビジネスとしては意味がないですよね。
「褒めれば伸びる」は子育ての論理
読者に分かり易く刺さりやすい部分があったので簡単に紹介します。
「叱ると辞められそうだから優しく接しよう」という上司や、「自分は褒められて伸びるタイプなんです」と自称する部下もいるでしょう。
しかし、「明確な成果が無い学校の勉強(受験はまた別)と、給料やボーナスという目に見える成果がある仕事とは本質的に異なる。」と書かれています。
リーダーは「プロセス」を評価してはいけない。リーダーが身に付けることは「プロセス管理」ではなく「結果の管理」です。
資本主義社会の中でいかに利益を求めるかが分かる部分です。
読んで感じたこと
本書は非常に合理的な内容
本書は非常に合理的な内容です。
組織の目的を達成するために無駄なものをすべて排除しているといった印象です。
「リーダーには血の通っていないような冷たい部分(=仮面)が必要だ」という内容としても捉えることができますからね。
しかし、資本主義社会で生きる我々大人にとって、大事なのは結果のみ。
過程が良くても評価されませんし、次の成果に繋がらなければ意味がありません。
「組織として最速で成果を出すためにリーダーがすべきこと」が書かれているだけあります。
部下も読むべき内容でもある
ただ、リーダーだから読むという訳ではなく、組織で働いている以上は全員が読むべき本だなと感じました。
部下である自分が上司に求めていることが果たして「組織のためになるのか」を考えるきっかけにもなります。
「上司の冷たい態度はこういう考えからくるものなのか」と理解を寄せることに繋がるかもしれませんし、感情的な上司に対して冷静に対応できるかもしれません。
本の内容を額面通りに受け取ってはいけない
本書に書かれていることは合理的ですが、理想論でもあると感じます。
チーム全員が同じ意識・考えであるならば本書に書かれていることを十二分に生かせるでしょうし、とても強いチームになるでしょう。
しかし、現実はそうではありません。多種多様な考え、性格の人が同じチームに存在します。仕事に前向きな人もいれば、クビにならない程度に最低限の仕事しかしない人もいるでしょう。
本書のメソッドをそのまま考えずに仕事に流用するとさまざまな問題が発生すると思います。
本書のメソッドは販売や営業のように目標値やノルマが明確な業種に向いており、その業種ならばすぐに取り入れられる一方、アイデアを出すような業種に取り入れるにはもう一工夫が必要だと感じます。
しかし、良く考えてエッセンスとして活用できれば良い効果を生むはずです。
本書に関わらずですが、本の内容を額面通りに受け取ってはいけません。他の意見と比較し、自分なりに噛み砕いて取り入れることが大切です。
心理的安全性の確保に通じる
「心理的安全性」と聞くと、職場に緊張感が無い、上司も部下もなんでも話し合える仲の良い間柄、といったイメージを持つ方もいるでしょうけどそれは誤解です。
こと営利組織における心理的安全性とは、
- ミスの報告を素直にできる状態
- 生産的な対立を前提として発言できる
- 感情的で情緒不安定な人がおらず、職場での悪い緊張感がない
- 目的のため、お互いの間違いを指摘し合える
ということではないでしょうか。
そう捉えると本書は心理的安全性に特化した考え方であるとも言えます。
会社は仲良しクラブではなく、大きな目的を達成するために集まった集団です。
その中で忌憚なく意見交換ができ、目的意識の高いチームを作る為には本書に書かれているようなことも必要であると感じます。
本当についていきたいと思われるリーダーは「利益をもたらしてくれる人」です。
仕事に厳しくても「数年後には成長できるはずだ」と、利益を感じさせることが大事です。
終章から読むことをオススメする。
本書の終章として「リーダーの素顔」という章があります。
今まで合理的で冷たい印象を受ける内容でしたが、終章は人間らしい温かさが書かれています。
リーダーと言ってもやはり血の通った人間です。リーダーという仮面を被ってまで組織のために働くのはなぜか、という根っこの部分が書かれています。
本書のポイント
最後に本書のポイントをまとめておきます。
- 本書は「組織の目的を達成するため、最も合理的なリーダーの役割」を説いた本
- ルールがあるからこそ能力を発揮でき、成長できる
- ピラミッド組織は成長スピードが速い
- 組織のために働いたことが、個人の利益に繋がっていく
- 最初に他者評価を獲得できないと、自己評価には何の意味も生じない
- ーダーが身に付けることは「プロセス管理」ではなく「結果の管理」
関連書籍
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