知っていますか?ウマとヒトとを繋ぐ道具である「馬具」のことを。【競馬で使うさまざまな馬具】

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- 馬という動物
あまざけ
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この記事の見どころ

馬に乗るときに使う道具のことを「馬具(ばぐ)」と呼びます。

「ブリンカー」はよく耳にしますよね。馬柱にも「B」と記載されますし。

ただ、他の馬具は競馬を観戦する際はあまり気にすることが無いかもしれません。

ですが、言葉の通じない馬と人とのコミュニケーションにおいて重要な役割を果たすものが「馬具」なのです。

この記事では「競馬で使用する馬具」について解説していきます!

鞍(くら)

馬や牛などの動物の背中につけ、動物と人・荷物との摩擦を減らす道具。

競馬だけではなく用途によりさまざまな種類があります。

競馬では馬の上に座るシーンが少ないので、極力、薄く小さく軽い鞍が使われます。

鐙(あぶみ)

鞍から吊り下げられており、ここに騎手の足を置き、体を安定させるもの。

あまざけ
この数cm幅の金具に足先だけを乗せて、全力で走る馬上で追ったり鞭を振ったりする騎手の運動能力はさすがです!

腹帯(はらおび)・上腹(うわばら)

鞍がずれないよう馬の胸に回して締める帯。

しかし、鞍を固定するには一本だけの腹帯では破損した場合に危険でかつ鞍ズレも起こしやすいので、その防止のため鞍の上から腹帯の上にもう一本の帯をしめます。これを上腹といいます。

ちなみに腹帯は強く締めすぎると能力に影響して走りにくくなるそうです。苦しいから当然ですよね。

馬銜(はみ)

馬の口に噛ませる棒状の金具。

馬の歯は、前歯と奥歯の間に歯のない部分があり、そこにハミをかけます。

ハミは手綱とつながっていて、人と馬が直接コンタクトを取る重要な道具です。

手綱とハミから馬に意思を伝え、動いてもらいます。

リングハミ

リングハミを装着しているスワーヴリチャード
引用:https://www.netkeiba.com/

リングハミといって、通常のハミにリングが付いているものもあり、下顎と舌をリングに通して装着します。

リングが舌を押さえることになり、舌を越す(舌が口の外にでる)クセを抑制できます。

頭絡(とうらく)

馬の頭からあご、頬、鼻の上、そしてうなじにわたって細い幅の革でできた馬具で、ハミを吊って馬の口の内に入れ、適当な位置を保たせるために使用します。

また同時に、馬を取り扱う場合の補助の役目もあります。

シャドーロール

頭絡の鼻革に装着するボア状のもの。

芝の切れ目や物の影などに驚く馬に対し、下方を見えにくくして前方に意識を集中させる効果を期待して用いられます。

また、競走中に頭を上げる癖のある馬に使用することによって、頭を下げさせ馬を御しやすくする効果を期待して用いられることもあります。

足元を見ようとするとシャドーロールが邪魔でより頭を深く下げないと見えませんので、結果、頭を下げた走りができるようになります。

人の目に付きやすい馬具ですし、”シャドーロールの怪物”「ナリタブライアン」がつけていたことでも有名ですね。

アパパネやアーモンドアイを管理した国枝厩舎では、レース中に自分の管理馬を見つけやすくする為に装着する場合もあるんだとか。

ちなみに画像の馬は”バナナ師匠”こと「スノードラゴン」です。

チークピーシーズ

正式にはシープスキン・チークピーシーズ。

頭絡の頬革にボア状のものを装着したもので、左右を見えにくくして前方に意識を集中させる効果を期待して用いられます。

あまざけ
シャドーロールは下を見にくくする馬具で、こちらは横を見にくくする馬具ですね。

ブローバンド

フルネームでシープスキン・ブローバンド。

頭絡の額革に装着するボア状のもので、上後方を見えにくくして馬の意識を前方に集中させる効果を期待して用いられます。

シャドーロール、チークピーシーズ、ブローバンドをフル装備したことのある馬はいるのでしょうか・・・?

「スピーディワンダー」という競馬漫画ではフル装備の馬が登場していますね。

ブリンカー / 遮眼革(しゃがんかく)

視界の一部を直接遮り周囲からの影響に惑わされないようにし、レースや調教に集中させるために用いられます。

メンコに合成ゴムやプラスチック製のカップを取り付けたものが一般的で、カップのつくりやサイズ、片側だけにカップを付けたりと、遮る視界の広さを変えることができます。

JRAで出走する際に使う場合は申請が必要で、競馬新聞などの馬柱には「B」と表記されます。

馬の視野の広さはどのくらい?

さて、馬の視界を敢えて遮るための馬具を紹介しましたが、ここでひとつ。

「馬の視野」ってどのくらいの範囲なのでしょうか?

馬は顔を動かさずとも約350度を見渡せるそうです。

要するに自分の真後ろ以外はすべて見えるということ。

こんなにも広い視野だと競走中にいろんなものが視界に入り、馬によっては集中できない場合があります。

なので、「視野を遮る馬具」を使うわけですね。

馬の視野について調べた記事もありますので、ぜひご覧ください!

メンコ

「馬の覆面」のことですね。

前を走る馬が巻き上げた砂をかぶるのを嫌がる馬に使います。耳も覆われるので音に驚いたりする馬にも効果があります。

耳まで覆われているものが一般的ですが、耳が覆われていない種類もあります。

馬具で最も目立つものとあって、勝負服と同じデザインにしたり厩舎カラーのメンコを使ったりと人間の趣味が多分に表れます。

ホライゾネット / パシュファイアー

メンコの目穴部分をネットで覆ったもの。

前を走る馬が跳ね上げる砂が眼にかかるのを嫌がる馬に用いられます。

ブリンカー程ではないにしろ視野を制限するので、レースに意識を集中させるために使うこともあります。

トンボの目みたいですね。

鞭(むち)

騎手が使用する、馬に合図を送る道具。

JRAでは長さ77センチ未満で、衝撃吸収素材を用いたパッドを装着したものでなければ使用できない決まりになっています。

基本的にはレース終盤の直線でのゴーサインとして鞭を使いますが、発送直後の「出ムチ」や、見せることで合図を送る「見せムチ」、肩にムチを軽く打つ「肩ムチ」などの使い方もあります。

鞭の使用回数については、国によって1レースで打てる連続回数が制限されています。

イギリスでは7回、フランスでは5回、日本では10回までとなっており、これを超えると騎手に過怠金が課せられます。(米国は全米統一ルール無し)

ちなみに日本ではこの使用回数は「1レースにおける累計」ではありません。

連続10回使用がダメで、その定義は「2完歩内」。

つまりは「最後の直線で鞭を使いっぱなしはダメ」という緩めな制限。

「筋骨隆々で皮が厚いサラブレッドは、鞭で叩かれたくらいでは痛みを感じない」という意見を耳にします。
なので、馬に合図を送る馬具として鞭が使われているのでしょう。

しかし、動物愛護の観点から鞭の使用回数を抑えようと国ごとに決まりがあるようです。

あまざけ
実際どれくらいの痛みを感じているのかは、馬に聞いてみないとわかりません・・・。

バンデージ / 肢巻き(しまき)

つまりは包帯。

運動中の脚の保護に使用するものと、運動後の保温に使用するものとがあります。

メンコと同様、ここにも厩舎カラーが出ている場合がありますね。

蹄鉄(ていてつ)

馬の蹄の裏に装着する鉄。

馬の靴みたいなもので、蹄を保護するために使われます。

釘を使って蹄に固定するのが一般的ですが、一部の競走馬には蹄が小さかったり薄かったりと、蹄に不安を抱える馬には釘は使用せず「エクイロックス」という特殊な接着剤で固定する場合もあります。

ちなみに接着装蹄で有名なのはあのディープインパクト。
ディープは1レースで蹄がかなり擦り減ったそうです。

当時この接着技術を取り入れていた装蹄師はアメリカで学んできた「西内荘さん」という方のみで、日本ではまだまだ発展途上の技術でした。

そんな中、蹄の不安を抱えるディープインパクトにこの技術を使い日本ダービーを制するという偉業をやってのけたすごいお方なのです。

まとめ

競馬で使う馬具を紹介してきましたが、僕ら競馬ファンが普段気にする馬具は全体のほんの一部。

競馬以外でも馬に関わる際に使用する馬具はまだまだたくさんあるそうです。

大昔は野生の姿のままの馬にただ跨っていただけの人間が、長きにわたる「馬との共生」の中で馬具を生み出したと考えると歴史を感じますね。

あまざけ
馬と人との歴史の勉強でもしようかなと考えています!

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あまざけ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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