今回紹介する1冊はこちら。
『馬を語り、馬に学ぶ』
【述 者】・・・矢作芳人
【発行日】・・・2022年3月20日
【頁 数】・・・287ページ
Contents
こんな人にオススメします!
- 競馬が好きな方
- 調教師の仕事内容を知りたい方
- 矢作調教師の考えを知りたい方
- なぜトップトレーナーになれたのか知りたい方
- 好きな馬の所属が矢作厩舎だった方
著者はどんな人?
1961年東京都生まれ。父は大井競馬の元調教師。開成中、開成高校卒。
オーストラリアで調教技術の修行後、1984年に栗東トレーニングセンターの厩務員となり、調教師試験に14回目の受験で合格。2005年に厩舎開業。
G1レースも多数勝利しており、日本ダービー2勝、豪コックスプレートと米ブリーダーズカップ(2勝)を日本馬で初制覇するなど、実績は枚挙にいとまがありません。
そして「ギャンブル好きのおじさん」でもあります。
書評にあたって
本というのは、著者からしたらいわば虎の巻。
核心に触れることを易々と引用してはいけないと僕は考えます。
このブログを読んでいただいているあなたに概要や見どころを紹介し、「本を買って詳しく読みたい!」と思ってもらえるような記事作りを目指しています。
本書の特徴
本書を簡潔に表すと、以下の3点。
- 手掛けたサラブレッドの思い出話を、自身の仕事に対する考え方とともに述べていく
- 競馬というギャンブルとの向き合い方
- 競馬の未来のために矢作調教師ができること、していること
本書のタイトル通り、それぞれの馬のことを語りながら、そこで学んだことを今後にどう生かしているのか、どういう教訓を得たのか、といったことが細かく書かれております。
紹介される馬は有名無名に関係ない。
コントレイルやリスグラシュー、ラブズオンリーユーなどの名馬はもちろんですが、重賞未勝利馬も紹介されています。
「その馬と過ごした時間の中で、ホースマンとして特筆すべき学びがあったかどうか」で、紹介する馬の選出がされていると感じました。
そういう意味で、本書は「俺の手掛けた自慢の馬たちを見てくれ」という自己満足の内容ではありません。
人と人、人と馬との信頼関係で成り立つ仕事
厩舎は「会社」のようなもの。
それぞれの関係を表すなら、調教師が社長で、厩務員や調教助手が従業員。そして馬主が株主です。
本書では矢作厩舎の人材育成、方針など会社としての話が多く書かれています。
もちろん厩舎によって運営方法や方針は異なりますので、本書では「矢作メソッド」を知ることが出来る内容となっています。
メディアでは語られなかった裏話
メディアで語られず、ネットにも出回っていない貴重な話も書かれています。
これはやはり「本」という有料の情報だからこそ。
例えば、
- 「モズアスコット」の連闘の理由
- 馬主との絆で生まれるドラマ
- 馬主と方向性の相違で決裂した絆
- 馬を送り出す厩務員の心情
- 騎手への指示を含むやり取り
やはり当事者から聞くこの手の話は面白いです。
競馬村からの脱却へ
伝統的な慣例やしきたりが多く残っている日本の競馬界。なので「競馬村」と揶揄されることもあります。
閉鎖的、封建的で旧態依然としており、「昔ながらのやり方」が今でも根付いているとのこと。
JRAについても前例踏襲の官僚主義なので、内輪の都合を押し付け、馬主と意見が合わないことも多いそう。
矢作氏は「それらのすべてが悪いわけではないが」と前置きして、協調を尊ぶあまり変化をよしとしない風潮がある中で声を上げておられます。
例えば、女性騎手の登用や馬優先の選択ができる下地作りなど、積極的な活動をされています。
読了後:あまざけの考え
輝かしい実績の裏にある努力
矢作調教師に限らず、どの業界でも「優秀な成績を収める人はすべからく努力している」ということ。
本書は矢作調教師の努力が書かれていて、失敗があるからこその成功だということが分かりました。
自分に置き換えて考えてみる
仕事内容は共通していなくても、考え方や取り組む姿勢というものは参考にすることができる。
例えば、以下のような内容が各所に散りばめられています。
固定観念はいったん捨てて、考え方を常にアップデートしておく必要がある。
古くからの伝統は大事にしながら、今の時代に合ったやり方を取り入れていくことで進化していかなければならない。
トラブルに対し、解決して終わりではなく、これまで以上の仕事をして返すこと。そうすれば信頼関係はより深まる。これは厩舎運営に限ったことではないはずだ。
業界は関係なく一流のビジネスマンのメソッドを参考にし、出来るところから真似をすることは大切だと考えております。
本書のポイント
最後に本書のポイントをまとめておきます。
- 人と人、人と馬との信頼関係
- メディアでは語られなかった裏話
- 時代に合わせたアップデート
- ギャンブラーとしての矢作氏
関連書籍
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