【競馬レース回顧】第45回ジャパンカップ_2025/11/30

【競馬】
あまざけ
こんにちは。「あまざけ」と申します。

レース結果

外国馬が20年ぶり(2005年アルカセット以来)に勝利したジャパンカップ。

欧州の年度代表馬である「カルティエ賞」に選ばれ、最新のロンジンワールドベストレースホースランキングでも1位という『カランダガン』が、アウェイの地である東京競馬場で「2:20.3」という芝2400mのレコードタイム更新というオマケ付きで日本馬を打ち破った。

発送直後に川田騎手騎乗のアドマイヤテラが躓いて体勢を崩し騎手が落馬しカラ馬で他馬と並走。ゴール後にはカラ馬を避けようとしたマスカレードボールがダノンデサイルに接触しルメール騎手と戸崎騎手が落馬するという事故。

なんとも情報量の多い2025年のジャパンカップの結果は以下。

タイム

ハロンタイム 12.3 – 10.8 – 11.4 – 11.5 – 11.6 – 11.6 – 12.0 – 12.2 – 12.3 – 11.8 – 11.5 – 11.3
レース前半3F 34.5
レース上り3F 34.6
前半1000m 57.6
後半1000m 58.9

 

総評


レース自体の1000m通過タイムは57.6。一見するとかなりのHペースに見えるがこれは単独の逃げを打ったセイウンハーデスのラップ。

離れた2番手を走っていたホウオウビスケッツの1000m通過は58秒台半ば~後半ぐらい。そしてレースラップの後半1000mは58.9。

単独逃げのセイウンハーデスを無視すると「前半1000m58秒台後半~後半1000m58.9」という、全体時計が比較的速い淀みなく流れたイーブンラップ。(7~8Fでラップタイムが遅くなったのはただ単に先頭のセイウンハーデスが緩めただけで後続のペースはフラット。)

そして今週の東京競馬場の馬場状態は内外の有利不利の無い良馬場。ルメール騎手も当週の馬場状態をそう述べております。
なので馬に負荷の少ない軽い馬場。自然と時計は出ます。

有利不利の少ない馬場にイーブンペースだと、一般的には先行馬にも差し馬にもチャンスのある地力勝負になる。

しかし本レースは良馬場とはいえ息を入れるタイミングがほとんど無いハイラップ。スタミナの持続力が必要な展開。この流れたペースでは押し切りを図りたい先行馬には辛い展開。


そして何より、先団の先頭かつ外目に位置するカラ馬(アドマイヤテラ)の存在が明暗を分けました。

騎手不在のカラ馬はいわば「ドライバーのいない車」。どこに向かって走り出すか分かりません。よって、カラ馬より内にいる先行馬は外に持ち出したくても物理的な危険がありなかなか外に出せない状況。

加えてカラ馬のポジションも重要。3~4コーナーではカラ馬が先団外目にいることで先行馬たちはポジションを上げれず、直線入り口では馬群が凝縮。(騎手不在なのになんで4コーナーでスッとポジションを上げて好位につけれんねん・・・)

しかしここはさすがにカラ馬。制御の効かないアドマイヤテラが内に切れ込んできたこともあり、先行馬は進路を見出せず軒並み失速。5着以内に入ったのは4角9番手より後ろにいた馬。先行馬で唯一掲示板に入ったのは4角5番手のクロワデュノールのみ。

しかし、ジャパンカップのレースのラスト3Fが「11.8 – 11.5 – 11.3」の加速ラップ。テンから淀みないラップなのに、上りは加速ラップという究極の末脚勝負になったレース。

アドマイヤテラが内に進路を取ったやいなや差し馬たちが外目を強襲。レース上がりが加速ラップの中、4角11番手から33.2の驚異的な末脚で差し切ったカランダガンとそれに迫ったマスカレードボールは異次元。

短評

カランダガン

フランス馬がパンパンの良馬場の東京競馬場で日本レコードを叩き出し、上り33.2で駆け抜けるとは想像できなかった。(筆者あまざけは馬券から完全に外していました・・・。)

道中はマスカレードボールを見るポジションで進め、持ったままの手応えで直線へ。

JRAは陣営に対して2025年6月のサンクルー大賞後から勧誘を始めていたらしく、そのころから秋の大一番として目標にしてきたのでしょう。(騙馬であるカランダガンは凱旋門賞に出走できない)

カランダガンの強さに感服。世界一の走りを日本の競馬場で見せてくれてありがとう。

マスカレードボール

どスローの天皇賞秋を上り32.3の瞬発力で差し切っただけに、距離延長の本舞台かつハイラップをこの上がりで差してきて世界一の馬と競り合った能力は疑いようがない。

どんな展開にも対応できるのは馬の能力とルメールの騎乗技術が組み合わされた結果。

ダノンデサイル

直線ではシンエンペラーにぶつけられ、内からヨレたクロワデュノールと外から差してくるマスカレードボールに挟まれるという不利の連続。

直線で不利を受けながらも4着に捻じ込んできたのはさすが。

クロワデュノール

負けて強しの競馬をしていたのはこの馬だと思っている。

レコードが出るくらいのハイペースを先行しての4着。凱旋門賞帰り、最終追切まで出走を決めかねていただけにメイチとは程遠いコンディションの中、これだけの結果を残せたのは能力の証。

5着以内の4角位置は先頭から11-9-9-5-13。

ちなみに4角4番手以内にいた馬の最高着順はコスモキュランダの9着で軒並み失速。

直線では脚が上がってヨレるシーンもあり、その後アドマイヤテラが馬体を合わせてきたら下げるという、無理をしない騎乗でした。

なお、有馬記念は見送るみたいですね。(レガレイラやミュージアムマイルとの使い分けでしょう)

カラ馬について

ジャパンカップという大舞台で騎手不在の馬、いわゆる「カラ馬」が激走し、実質1着でゴールしたことが多くのファンの目に触れたことでしょう。

「騎手なんてただの重りでしかない」などという極論も目にしますが、現役ジョッキーである田辺騎手がジャパンカップ後に自身のコラムで以下のように述べていることがとても印象に残りました。

カラ馬が速く、スムーズに走っているように見えるかもしれませんが、それは他の騎手たちが危険回避のために、近寄らず、そういう状況を作っているということなんですよ。

関連記事

『ウマの科学と世界の歴史』【紹介43冊目】

【競馬トリビア】「英語の月名」が付けられたレースはいくつある?

『調教師になったトップ・ジョッキー 2500勝騎手がたどりついた「競馬の真実」』【紹介41冊目】

サラブレッドの「ノド鳴り」ってどんな症状?【馬について知ろう】

現役のトップ調教師が仕事のメソッドを語る。『馬を語り、馬に学ぶ』【紹介27冊目】

Sponsered Link